IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース
IPv4アドレス在庫枯渇から1年が経過し、 いよいよIPv6を利用したインターネットの本格展開が目の前に迫ってきています。 2012年6月6日には"World IPv6 Launch"*1が実施され、 海外の大手コンテンツ事業者などはこの日以降、 恒久的にIPv6対応することを宣言しています。
2012年3月に開催された日米の政府間協議や産業界代表による民間対話*2においても、 インターネット関連政策の中で「IPv6の推進」が重要な議題の一つとして取り上げられています。 日本国内の通信事業者、コンテンツ事業者(Webサイトの運用者含む)、 データセンター事業者をはじめとするインターネット関連事業者の皆様におかれましても、 このような状況を踏まえてIPv6対応に向けた取り組みをこれまで以上に加速していくことが重要になります。
しかし、日本では国内のネットワーク構造の特殊性から、 インターネットのIPv6対応に伴って、 一部のIPv6インターネット未対応のユーザーのインターネットアクセスに遅延等の問題が発生することが指摘されています。 この点を回避するためにも、 通信事業者などのインターネット関連事業者が連携して、 ユーザーに対してIPv6によるインターネットの接続性を提供していくことが望まれます。
本文書は、今後のWorld IPv6 Launchの実施に向け、 インターネット関連事業者の皆様のIPv6対応促進を目指すものです。 詳細は、別紙もご参照ください。
- *1 World IPv6 Launch
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非営利の国際組織であるInternet
Society(ISOC)が提唱して2012年6月6日に世界的に行われるイベントで、
Webサービス事業者、プロバイダー(ISP)、
家庭向けのネットワーク機器を提供するベンダーなどが6月6日以降、
恒久的にIPv6を有効にするという取り組み。
このイベントには、Google、Facebook、
Yahoo! 等のWebコンテンツ事業者をはじめ、
さまざまな事業者が参加を表明しており、
今年の6月以降はインターネットのIPv6対応が急速に進むと考えられる。
World IPv6 Launch Webサイト http://www.worldipv6launch.org/ - *2 日米の政府間協議や産業界代表による民間対話
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- インターネットエコノミーに関する日米政策協力対話第3回局長級会合に係る共同記者発表(2012年3月23日)
- 日米インターネット・エコノミー民間会合共同声明(2012年3月21日)
(社)日本経済団体連合会/在日米国商工会議所
■本件に関するお問い合わせ先
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース info@kokatsu.jp
(事務局: IPv6普及・高度化推進協議会(株式会社イーサイド内)
〒223-8526 横浜市港北区日吉4-1-1 慶應義塾協生館 2階 Tel: 045-534-3881)
■IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースとは
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースは、 IPv4アドレスの在庫枯渇の危機を共有し、 既に社会基盤として重要な役割を果たしているインターネットやその上で行われているビジネスに多大な影響を及ぼす可能性があることを認識した上で、 その対策と対応について、 インターネットに関わる各プレーヤーが連携・協力して推進するために、 総務省を含むテレコム/インターネット関連団体によって発足されました。
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースWebサイト:http://www.kokatsu.jp/
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースでは、ISP、CATV事業者、 データセンター事業者、ASP /CSP、機器ベンダー、 企業ユーザー等向けに以下のようなIPv6対応に向けた各種支援策を行っており、 幅広くご活用いただけます。 また、上記Webサイトにおいても各種ノウハウを提供しています。
- ・IPv6対応テストベッド
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IPv6普及・高度化推進協議会及び社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)との連携のもと、
これからIPv6対応を検討されている企業、団体の皆様が、
試験を行うことができるIPv6テストベッド(検証環境)を、無料で提供しています。
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/news/2011/12/ipv6-12.html - ・IPv6ハンズオンセミナー(IPv6オペレータ育成プログラム)
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IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースの企画のもと、
IPv6普及・高度化推進協議会とJPNICが運営主体となり、
ハンズオンセミナーを開催しています。
各コースはIPv6技術者の育成を目指すことを目的に、
少人数で実機を利用した演習形式で行います。
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/event/2012/03/ipv6-handsonseminar.html - ・IPv6 Ready CE Router相互接続試験
- IPv6普及・高度化推進協議会との連携のもと、 IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースメンバーである財団法人電気通信端末機器審査協会(JATE)では、 World IPv6 Launchに参加を検討している家庭用ホームルーター製造事業者向けに、 ISOCが要求しているIPv6 Ready CE Router相互接続試験シナリオに則った公式な検証支援サービスを提供しています。
問い合わせ、申し込みとも: info-ipv6@jate.or.jp
別紙
■World IPv6 Launchの参加条件と参加企業(2012年4月16日時点)
World IPv6 Launchへの参加は、 「Webコンテンツ事業者」「インターネット接続事業者」「機器ベンダー」の三つの分類で登録を受け付けられており、現時点で、
- Webコンテンツ事業者:Google、Facebook、Yahoo! 等
- インターネット接続事業者:KDDI、AT&T、Comcast 等
- 機器ベンダー:Cisco 等
といった世界の主要企業が参加を表明しています。
World IPv6 Launchの告知サイトによると、 参加条件は以下のように規定されています。
- ・Webサービス事業者:
- ビジネス展開をしている主要なWebサイトをIPv6に対応させること。 (既に対応しており2012年6月6日以降継続する場合も含む。 www.IPv6.example.com のようなIPv6専用サイトやミラーサイトは除く。)
- ・ISP:
- 2012年6月6日の段階で自社のインターネット接続サービスの新規加入者にIPv6インターネットをデフォルトで提供すること。 既存顧客にもIPv6インターネットを提供し、 IPv6対応済みWEBサイトに対して1%以上がIPv6でアクセスしていること。
- ・機器ベンダー:
- 自社の家庭向けルーターにおいてIPv6をデフォルトで有効にすること(IPv6 Ready CE Routerの相互接続試験に"合格"している必要がある)。
■日本でIPv6未対応のユーザーのインターネットアクセスに遅延等の問題が発生することについて(IPv6-IPv4フォールバック)
インターネット上のWebサーバーなどがIPv6に対応し、 IPv6とIPv4の両方でアクセス可能になった場合でも、 ユーザーのアクセス環境がIPv4のみであれば、当然IPv4のままで通信が行われます。
しかし日本では、NTT東日本/西日本のBフレッツ網などのIPv6クローズ網と、 ISPを介したインターネットとの両方に接続するユーザーが多く存在します。 このような環境において、 インターネットに対してIPv6接続が提供されていないユーザーが、 インターネット上のIPv6に対応したWebサーバー等にアクセスする際には、 遅延が発生することが報告されています。
この問題は、一度IPv6での通信を試みた後、 IPv4でのアクセスをやり直すために遅延が発生するもので、 IPv6-IPv4フォールバック問題と呼ばれています。 現在は、 Bフレッツ網などにフォールバック時の遅延を小さくする仕組みが組み込まれていますが、 それでも1秒程度の遅延の発生が報告されており、 アプリケーションによっては遅延がさらに大きくなることがあるとされています。
詳細は、 総務省「IPv6 によるインターネットの利用高度化に関する研究会第三次中間報告書」P.15脚注の説明もご覧ください。
■フォールバック問題の回避策とその課題
フォールバック問題は、 昨年6月に行われたWorld IPv6 Dayの時にもクローズアップされました。 しかし、この時は24時間限定のイベントであったこと、 および一部のISPが暫定的な対処を実施したことで、大きな問題にはなりませんでした。
この暫定的な対処は、ISPのDNSフィルタリングによって、 ユーザーに通知するアドレスをIPv4に限定すること(AAAA filter)で実現しました。 しかし、ISPがすべてのユーザーに対してこのフィルタリングを実施すると、 本来IPv6で通信できるユーザーもIPv4でしか通信できなくなります。 昨年の6月時点では、ほとんどのISPがまだIPv6接続を提供していなかったため、 単純に全ユーザーに対してDNSフィルタリングを実施することが可能でした。 しかし、その後IPv6接続サービスを開始したISPも多く、 今年の6月以降にこの対処を実施する場合には、 IPv4接続のみを提供しているユーザーに限定して行う必要があります。 この点、現在、 通信事業者やコンテンツ事業者等でその対策の具体化が進められています。
また、DNSフィルタリングには以下のような課題も指摘されています。
- DNSフィルタリングは、特定のサイトやコンテンツへのアクセスを遮断するために用いる手段と同じであるため、本来インターネットが持つべきオープン性や透明性に反する方法であるとも考えられること。
- さらに、キャッシュサーバに偽情報を入れ、サイトやコンテンツを詐称する事象(DNSキャッシュポイズニング)を防ぐためのDNSSECの導入が進むと、DNSフィルタリングとの両立が難しくなる可能性があること。
従って、今年6月以降にDNSフィルタリングの導入を検討するISPは、 これらの課題を十分考慮した上で、あくまで暫定的な対処として導入すべきです。 同時に、本質的な解決策であるIPv6接続サービスの提供を進めることが望まれます。