例 2進数での表記 11000000 10101000 00000000 00000001 10進数での表記 192 . 168 . 0 . 1
2011年2月8日 JPNIC作成
現在私達が利用しているインターネットでは、 主にIPv4という プロトコル が利用されています。 このプロトコルを利用した通信を行うために、 インターネットに接続された各 ホスト には相互に通信先を識別するための番号が割り当てられます。 この番号がIPv4アドレスであり32ビット(2進数で32桁分)、 すなわち232で約43億個が用意されています。 この約43億個という数字は、IPv4プロトコルの仕様からくる制限であり、 IPv4プロトコルを利用し続ける限り、 桁数を増やしたりして上限を変えることはできません。
IPv4全アドレス空間:
2進数で32ビットを表記した場合
00000000000000000000000000000000~1111111111111111111111111111111111
但し、2進数のままだと、コンピュータが扱うのには向いていますが、 人間にとってはわかりにくいため、 通常は2進数を8ビットずつ区切った上で、 それぞれを10進数に変換し、ドットで繋いだ形で表記されます。
例 2進数での表記 11000000 10101000 00000000 00000001 10進数での表記 192 . 168 . 0 . 1
IPv4のアドレス空間を10進数で表記すると以下のようになります。
0.0.0.0~255.255.255.255
IPv4アドレス空間では全体を256個に分割して、 分割した一つを「/8ブロック」と称します。 32ビットの空間の最初の8ビットを一つの区切り単位として、000/8、 001/8、002/8...254/8、255/8のように256個に区分し、表記されます。 ちなみに、 一つの「/8ブロック」は224≒1678万個のアドレスを内包しています。
IPv4アドレスの全空間のうち、 プロトコルの仕様として予約されている空間が「/8ブロック」で32個あります。 さらに特殊な用途として RFCなどで規定されているブロックが3個あるため、 全部で221個分の「/8ブロック」が通常のインターネット接続に利用できるアドレスとして残ることになります。
000/8 | 自身のネットワークを表すアドレス(RFC3330) |
010/8 | プライベートアドレスとして利用(RFC1918) |
127/8 | ループバックアドレスとして利用(RFC3330) |
224/8~239/8 | IPマルチキャスト用アドレス(RFC1700) |
240/8~255/8 | プロトコル予約アドレス(RFC1700) |
初期のインターネットにおいては、 接続組織へのIPv4アドレスの割り当てを、組織の大きさに応じて、 「/8ブロック」単位(クラスA = 約1600万個)、 あるいは一つの「/8ブロック」をさらに256分割した単位(クラスB = 約65000個)、 そしてさらにクラスBと同じサイズのブロックを256分割した単位(クラスC = 256個)で行ってきました。 この方式で割り当てられたアドレスは現在「/8ブロック」で92個あります。
1990年代に入り、 インターネットの商用利用などによるアドレス消費の増加が見込まれると、 IPv4アドレスの消費を押さえるための技術である CIDR が導入され、 IANA から RIR を通じたアドレスの割り振り、 割り当て管理が行われるようになりました。 またアドレス変換技術 (NAT) を利用し、 組織内の通信にはプライベートアドレスを利用し、 ゲートウェイのみにグローバルアドレスを割り当てるようにするなど、 インターネットの拡大に対応しつつ有限な資源である IPv4アドレスを有効活用する努力が行われてきました。 また、このようなIPv4アドレスの効率的な利用に向けた努力と並行して、 新たなインターネットプロトコルの開発も着手されました。 これがIPバージョン6(IPv6)です。
しかし、21世紀に入ってからのブロードバンドの普及などにより、 インターネットはさらに急速に拡大・発展し、これは同時に、 IPv4アドレスの消費にもつながることになりました。 このため、 2004年以降は毎年おおよそ10個程度の「/8ブロック」が世界中で消費されおり、 2011年2月3日にはIANAの中央在庫が無くなりました。また、2011年4月15日にはアジア太平洋地域の在庫もなくなりました。
前述のように、 2011年2月3日にIPv4アドレス分配の大本であるIANAの在庫が、アジア太平洋地域のIPv4アドレスを管理しているAPNICの在庫は、2011年4月15日になくなりました。
IPv4アドレスの在庫が無くなると、 その後は新たなIPv4アドレスの分配ができなくなります。 これはつまりその後において、 従来のようにIPv4というプロトコルに大きく頼った形でのインターネットの拡大・発展ができなくなるということにつながります。 これがIPv4アドレス在庫枯渇による問題です。
世界中には、 これからインターネットを活用しようとする国や人々がまだまだたくさんいます。 日本国内においても、新たな機器やサービス、 アプリケーションの発展によるインターネットの利用拡大が期待されています。 このインターネットの発展、拡大を妨げないようにするために、 IPv4アドレス在庫枯渇への対応が必要であるということが、 現在の世界的な共有認識となっています。
この認識のもと、 JPNICでは2007年度に 「IPv4アドレス在庫枯渇問題に関する検討報告書」 を公開し、 また2008年度には総務省の 「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」 が報告書を公開しました。 それぞれの報告書では、いずれも対応策として以下の三つを挙げています。
このうち、1と2は比較的に着手が容易ではあるものの効果は限定的であること、 3は恒久的な対応策といえる一方で、コストが掛かるとともに、 まだまだ普及が不十分であるという問題を抱えています。
これらの対応策の選択や組み合わせ、および対応策実施の詳細に関しては、 それぞれ対応が必要な事業者の判断に委ねられるものです。 特にIPv6の導入に関しては、IPv4との比較において、 ユーザの利便性が向上するものではないため、 事業者としても取り組みを積極的に進めることが難しい状況のようです。
しかしながら、すでにアジア太平洋地域の在庫もなくなった今、 この大きな危機を混乱なく乗り越えるためにも、 早急に対応策を推進することが求められています。